締めに酸辣湯

千葉県柏市。なぜか、吉良、鈴木に久米の資産家トリオとキャバクラで飲んでいた。言い出しっぺは私だ。せっかく知らない土地に来たのだから、その地の女性を通じて地元を調査することは、文科省の元官僚も率先していたくらいなので、経済的にも人間的にも正しい行為だ。妻と私はスマホで位置情報を共有してるので、私がどこで飲んでるか、知ろうと思えば妻は知ることができるのだが、あまり興味はないらしい。

しかし、初めての土地で情報がない。ネットでそれらしき店を見つけ、店を見学して見るもイマイチだった。別の店を見つけ、そちらに行くと、なぜか入口に知り合いがいた。彼らも同じ店を狙って来たらしいが、鈴木は一人でもＶＩＰルームで飲むような男だ。個室は店とは別のフロアにあり、他の客もいなかった。この階は我々の貸切だ。吉良の提案でカラオケ大会が始まった。一番だけを歌って採点し、点数の数字を足して９に近い者が勝ち。８１点なら最強だが、９１点ならアウトだ。

何十曲か歌ったところで時間がきた。２時間も歌っていたので、そろそろ行くか、という話になった。そこそこの金額になったが、資産家トリオが、

「これくらい、俺らにはぜんぜんハシタ金ですよ。」

と言いながら払っていたので、ゴチになることにした。金持ちの友達は持つものだ（笑）

四川麻辣湯

店を出て、締めでも食べに行くかという話になった時に、鈴木が言った。

「１軒目の店の向かいに気になる中華の店があったんですよ。」

確かにあった。私も気になっていた。

「酸辣湯（サンラータン）でも食べて帰りませんか？」

いいアイデアだ。そうしよう。

店内は大陸風の内装だ。日本では、大陸の中国人の店はこんな雰囲気であることが多い。これは味に期待できるか？冷蔵庫に火鍋の具が並べられている。これも大陸式だ。

メニュー

いい、実にいい！吉良や鈴木が見たことのない料理が多く載っている。そりゃそうだ。日本では馴染みのない、大陸ではよくある料理が多数あるのだ。

うー、たまらん、毛血旺まであるのが嬉しい！片っ端から頼む。吉良の顔に不安な表情がよぎる。餃子を食べたいだあ？こういう店に来たら、攻めなきゃダメだ。

空芯菜の炒め

さあ、きたぞ。まずは空芯菜の炒め。ニンニクが効いてシャキシャキした食感の空芯菜とマッチする。これは美味いだろう。

拌幹絲

そして拌幹絲。干豆腐（湯葉と訳されることもある）の千切りと野菜を塩とごま油で和えたものだ。私の好物だ。糖質制限してるなら、これを食べればいいのだ。うーん、もう少しあっさりしてる方が好きかな。そうだ、妊娠している妻がそろそろインシュリンを打ち始めるから、こいつをどこかで調達しよう。

拍黄瓜

二十年以上前、まだまだ北京が田舎臭い街だった頃、私は辛いものが苦手だった。そして、四川料理店で必ず食べていたのがこいつだ。キュウリのたたき、ニンニク醤油和え。美味い、爽やかで美味い。

麻婆豆腐

うーん、不味くはないけど、個人的にはイマイチ。この料理、人によって激しく好みが分かれるので、難しい。私はもっと花山椒が効いた、ガツンと来る方が好きだが、おそらく私と同じ麻婆豆腐が好みの人は日本では少数派だと思うから、仕方ないから。そういえば、国内で私が納得いく麻婆豆腐をたべたことがない。那覇で有名な麻婆豆腐の店にも行ったが、私の口にはまったく合わなかった。

焼き餃子

こいつはラーメンと同じく、日本人は中華料理だと思ってるが、中国人は和食と思っている。中国の焼き餃子は水餃子を焼いたものだ。皮はもっと分厚いし、パリパリにするために片栗粉を入れることもしない。ちなみに中国語では、焼き餃子は鍋に張り付くから「鍋貼」と言うのだ。

毛血旺

キター、これこれ！国内では一度しか食べたことがない。大阪の中華街だ。あそこも美味かったが、これはどうか？ワクワクしながら一口食べる。あれ？んー。これ、違う。似てるけど違う。毛血旺にとろみなど無い。パス。

烤羊肉串

最後にこれだ、羊が食いたい。烤羊肉串。羊肉の串焼き、クミン味。たまに中国料理の店のメニューに「ズーラン炒め」と書かれていたりするが、クミンのことだ。漢字では孜然と書く。中国語の発音では「ズーラン(ziran)」になる。羊とさわやかなクミンの組み合わせがたまらない。ああ、しばらく大陸に行ってないなあ。北京に食べに行きたいなあ。

「こんなに頼んで、食べきれないじゃないですか！」

吉良が騒ぐ。良いではないか。初めて食べるものばかりだろう？

ごちそうさま

結局、酸辣湯を頼むことなく、腹がいっぱいになり、終了。お会計は漢気（おとこぎ）だ、ジャンケンで勝った漢（おとこ）が全額払うのだ。強いな、久米が勝ったよ。金持ちが金を払う、これ当然アルね（笑）

うー、酔っ払った。ホテルに帰ろ。

四川麻辣湯（食べログ）