やぶけん かき揚げ天そば

石川県金沢市 手打ち蕎麦 やぶけん かき揚げ天そば

手打ち蕎麦 やぶけん

先ほどは近江市場で買い物したが、漬物に手を出すのは諦めた。塩分控えめでは漬物は諦めるしかないと思い込んでいたが、今回の出張前に自分で作った漬物は、大量の野菜に対して塩は小さじ半分しか使っていない。自家製の漬物ならば塩分量をコントロールできる。しかし売り物では塩分量が分からない。諦めざるを得ないのである。

ホテルに戻ってからランチを探す。さて、何を食べようか。昨晩、気になった蕎麦屋がいいだろうか。とりあえず足を運んでみる。ここだ。

店内

店はカウンター5席にテーブル一卓、それに仮テーブルが一つのこじんまりとした店だ。

店内に名刺が置いてあった。店主の氏名は藪(やぶ)憲一。なるほど、それで店名が「やぶけん」。マエケンと同じ短縮形である。サトエリと変わらないのである。転スラも慎重勇者もマジオペも…以下略。店内にそばもんが置いてある。私はまだ全巻集め切っていない。

メニュー

さて、何を食べようか。冷たい蕎麦と天ぷらの組み合わせが定番だ。お昼のセットが私のリクエストに適しているのだが、平日のみという寂しい話だ。ありがちな話だ。土日にランチタイムがあってもいいじゃないか。いや、ランチでなくてもいい、多少高くてもいいから同等品をそろえるのが商売の基本ではないだろうか。などと心の中で悪態をつきながら、ランチ候補を検討した。

あ、野菜かき揚げ天そば。なんだ、あるじゃないか。天ぷらと蕎麦の組み合わせ。かき揚げでもかまわんよ。食べるときにはつゆをつけ過ぎないように注意なのだ。

カウンターの端の席では、年配の客が温かい天ぷらそば食べていた。冷たい蕎麦でなければ本来の香りは味わえないと思うのだが、人の好みはそれぞれだ。

自家製蕎麦ハイボール、気になる。自家製とはどういうことか。

ランチタイムだからテレビはニュースを流している。ローカルCMではお好み焼きにソースをたっぷりと塗っている。だめだ、そんなにかけては。おまけにマヨネーズまで。ああ、塩分過多である。

野菜かき揚げ天そば

店主が厨房の暖簾をくぐり、私の蕎麦を持ってきた。カウンターの上に置かれたのはどんぶりが一つ。せいろが出てくると思ったのだが、ぶっかけスタイルだったとか。まあ、この際、それでも構わない。店主が私の眼前にどんぶりを置く。

え?

てんぷら…蕎麦?差し出されたのは、ゆで太郎の天ぷらそばとほぼ同等品であった。

あれ?

メニューを改める。なんでことだ!かき揚げ天そばは「温かい蕎麦」の欄に書かれているではないか。

痛恨のミス!

気を取り直して食べてみる。そばつゆを飲み干さないようにしよう。カツオの出汁がすごく効いているが、力強くグイグイとは来ない。ほんわりとした鰹節の香りが鼻孔を通り抜けていく。薄味でうどん出汁のようだ。いや、うどんつゆと蕎麦つゆの中間だろう。長野や関東ではあり得ないような調合である。

そばは細い。もりそばは手打ちの挽きぐるみで太い蕎麦と書いてあった。ネットには白くて太い蕎麦と書いてあった。だから期待していたのだが、丼の中のそばは細くて明るいグレーの麺。

見た目はゆで太郎と変わらない。

天ぷらは既に湿気ている。半分はそばつゆに溶け出しているかのようだ。箸でつかんで食べてみる。

食感もゆで太郎と変わらない。

なんだ、こりゃ?

別にゆで太郎をディスる気はない。立ち食い蕎麦では一番上等だと思う。なのでちょくちょく食べたりもするが、温かい蕎麦はどうしても麺がゆるくなる。ただ、手打ちそばがゆで太郎なみの麺に劣化するのが納得いかないのである。

天ぷらはどんどん液体に浸食され溶解していく。蕎麦は伸びていてぶつぶつ切れる。私の心も折れそうだ。メニューには天ぷらと盛り蕎麦のランチセットは平日のみと書かれている。

じゃあ、土曜日の今日はどうしろというのだ?ただただ、天セイロが食べたいだけのことなのに、なしてこんな目にあうだよ?!

扉が開き、一人の客が店に入ってきた。おもむろにランチセットをオーダーする。何言ってんだよ、ランチセットは平日のみと書かれてるだろうが、心の中で隣客の行為を嘲笑う私に女将さんが衝撃的な事実を告げた。

「ランチは平日だけなんですよ。本日はサービスセットのみとなっております。外に書いてある通りです。」

なんだと?
嘘だろ!
嘘だと言って、今すぐ~って今井美樹じゃねえっ!

先ほど撮影した外のメニューの写真を見る。確かにサービスセットと書いてある。わかりにくい、ランチとサービスセットが同等品だと、どこにも記載がない。ユーザーインターフェースがなっていない。店に入るや否や、おもむろに無遠慮にランチセットを頼んだ客のほうが勝ちだと言うのか?納得がいかない。世の中は常に理不尽だ。

付け合わせ

付け合わせの野菜甘酢漬けは、酸味控えめで美味しかった。

蕎麦のデザートも若干プルプルしていて、意外な食感。ほのかな甘みが体に優しそうだ。

だが、この蕎麦はいかんだろう! カウンターに座っていた年配の客が女将さんに話しかける。

「いやね、私はガンで胃をとってしまってね、冷たい蕎麦は食べれないんですよ。」
「私なんか子宮から何から全部取られちゃったよ!」

女将さんがハードなことをサラッと笑いながら言ってのけた。

なるほど、野菜かき揚げ天そばは老人向けメニューなのだろうか。それならば納得である。この薄味、コシの無い蕎麦、蕎麦つゆに溶けゆく油分控えめの天ぷら。まるで病人食だ。だが、今の私の疲れた胃にはこの方が合っているやも知れぬ。この店は体調がいい時に再訪しよう。その時は迷わずオーダーするぞ。

「サービスセット下さい。」

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