四度目の出雲
数えてみると、出雲には二年前に二度、今年の春に一度来た。今回が四度目だ。日本商工会議所青年部 全国会長研修会がこの地で開催される。
全国530箇所に商工会議所があり、そのうち460箇所あまりに青年部が設置されている。さらに、このうち413青年部が日本商工会議所青年部(通称、日本YEG)に加盟している。年に一度、日本YEGに加盟する、全国の商工会議所青年部の今年度と次年度の会長が一堂に会し、研修会を行うのが全国会長研修会なのだ。
出雲YEGはこの日のために五年前から準備してきた。長い月日だ。この日は夕方から会議をした後に、懇親会の席があったのだが、断った。明日から二晩は大きな懇親会がある。一人でゆっくりと食べられるのは、今晩だけだ。自分の足で店を見つける。食べ歩きの夜なのだ。
すし政
ホテルに戻ると、ネットで寿司屋を検索した。飲み屋街だと、知人に見つかり、スナックに強制連行される。少し離れた場所がいい。明日からの戦いに備えて、今日は英気を養いたい。
出雲の地において、酒の席は戦いだ。初めて出雲にきた時、何も知らない私は、とんすいで日本酒を散々飲まされて、記憶を失った。翌朝起きると、食べた記憶のない出雲そばがスマホに写されてるばかりか、Facebookに「サバ刺身うまいなう」などと投稿して、娘からコメントまで付けられていたのだ。
一軒見つけた。その名は「すし政」。いい名前ではないか。
店に入ると、中はカウンター7席にお座敷2宅。ビールはスーパーアサヒの瓶のみ。老夫婦二人で切り盛りしている店だ。地魚はないと断られる。刺し盛は三点盛りとのこと。
お好みで食事スタート
まだこ、カンパチ、ヒラメの握りを注文する。タコが美味い。醤油は甘めのたまり醤油だ。
カンパチも臭みなく、脂がのってうまい。久しぶりにいいカンパチを食べた気がする。美味しくないことが多いからカンパチは好きだけど、普段は食べないのだ。
ヒラメは刺身だが、ぶつ切りだ。ねっとりとしてうまいが、スジが多い。ウニは北海道産だったので頼まなかった。
冷酒は天穏(てんおん)の上撰。地酒だ。辛くなくて好みだ。基本、純米酒しか飲まない私でも呑める。
クエとアオリイカ、アジをいただく。シャリ少なめの握りで一貫ずつだ。対応してもらえるのが嬉しい。
クエはねっとりとして味が濃厚。白身だから濃厚と言ってもたかが知れてるが、ヒラメよりも味が濃い。冬が来たって感じがする。クエと言えば、妻と三重に食べに行ったことがある。尾鷲だ。
アオリイカもねっとりと甘く、そこに刺激的なわさびがアクセントを添える。美味い。厚みもあって食べ応えのある一品だ。
魚が酒に合う。やっぱり、酒はこうやって飲むものだ。噴霧器で口に強制注入するような飲み方はダメだ。
アジは生臭さはなく、ネギと生姜がマッチして爽やか。美味い。身は適度にしまっていて弾力がある。脂がのって旨味もある。鮮度に頼った寿司ではない。うーむ。
うなぎと玉子と
アナゴはなくウナギだとのことで、ウナギの握り。西日本はウナギがアナゴよりメジャーだ。食感はかりふわ。味は濃い目。うなぎの脂に対抗してるのだろう。塩っぱいわけではない。美味いな。
玉が美味そうで、アテで頼む。甘すぎず、玉子の味を生かしつつ、しっかりと出汁を効かせた絶妙の味付けだ。美味い、美味いよ。
この店は街に必要な安くて美味しいお寿司屋さんだ。普段使いにとてもいい。反面、旅行者が地のモノを食べたいと言った、出雲を味わうための店ではない。人によって評価が割れる店だろう。住んでる街に安くて美味い寿司屋がない方は来られるといい。しかし、グルメの方は肩透かしを食らってしまう。
一つ言えることは、沖縄にこんな寿司屋があれば、相当繁盛するだろうなということだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)