出雲でランチ
私はホテルの宿泊が苦手だ。よく眠れないのだ。なので出張が長引くと辛い。寝不足になる。
ところが、今回の出張では毎日爆睡の日々だ。八時間以上も寝ている。いつもは夜中に何度も目を覚ますのだが、一度しか起きない。今朝も目覚めて時計を見たら、9時を過ぎていた。いつもより二時間遅い。ベッドに入る時間は変わらない。なぜだろうか?神々の集う場所だからなのか。
いや、静かなのだ。隣の物音がしない。ベッドがダブルで広い上に、寝心地がいい。自宅だと妻のイビキと歯ぎしりに、けいたまがベビーベットで転がって、手すりに身体をぶつける音で目が覚める。
そう言えば、実家も物音がしないので熟睡する。
来年には新しく家族が増えるので、寝室の構成を見直さなくてはならないと、妻も言っている。そのためにはダンボールに入ったままの、推定三千冊に及ぶコミックをどうにかしなければならない。他にも引っ越すときに断捨離したのだが、まだ足らない。どうしたものか。
カフェルーム六花
そんなわけで、ホテルの朝食には間に合わなかった。メールとスケジュールをチェックすると、もう11時だ。今日の予定は13時から市民会館で会員総会、開会式だ。どこかでブランチを食べてぷらぷらと歩けば、ちょうどいいくらいに着くと考えた。
さて、何を食べようか。
まずはホテル近くの天ぷら屋に行くが、閉まっている。人がいる気配も無い。休みだろうか。
そのまま街中を歩く。さびれた商店街だ。飲食店もない。駅前通りを渡り、さらに市民会館に向かって商店街を進むと、ふと一軒の店が目に入った。
昭和の香りがする。うん、こういう普段使いの店もいい。出雲の庶民らが食ってるものを試すのも悪く無いと、なぜか上から目線風に思いながらメニューを見る。
メニュー
ハンバーグカツ定食。いいね。
ドアを開けると、中には夫婦と地元客が一組。完全に喫茶店だ。窓側の席に座る。テーブルゲーム機が置かれている。説明を読んだが、なんのゲームかわからない。とりあえず、インベーダーでは無い。うーむ。
メニューをみる。サービス定食六百円。Aハンバーグ、Bチキンカツ、Cハンバーグカツ。ハンバーグもチキンカツも捨てがたい。両方食べられるのがいい。そうなると、ハンバーグカツピラフも捨てがたい。笹塚ロビンのカツピラフではないが、ハンバーグもチキンカツもピラフとは相性がいい。
うーむ。
「ご注文は決まりましたか?」
おかみさんに尋ねられて、とっさに「ハンバーグカツ定食」と答えてしまった。凶と出るか、吉と出るか。
ハンバーグカツセット
なかなか出てこない。ハンバーグを焼いてるのだろうか。手間がかかるのかな。10分ほど待っただろうか、運ばれてきたそれは、私が想像していたものと違った。まさに衝撃的。「ハンバーグカツ」とは、ハンバーグとチキンカツではなく、ハンバーグをカツにしたものだ。これはメンチカツでは無いのか?
「コーヒーはいつ出しますか?」
おかみさんに尋ねられるが、私はコーヒーを飲まないので、お断りした。落ち着こう、まずは豆腐だ。冷奴の食べ方は、地方によって異なったりする。学生の頃、金沢大学の食堂で、豆腐にからしと醤油だったのも驚きだった。こいつは海苔とゴマに醤油。私の好みは絹ごしだが、木綿でも美味しい。天ぷらはなんの野菜かわからない。黄色いこいつは何だろう。
ハンバーグカツを食べてみる。おお、これは確かにハンバーグだ。メンチカツでは無い。卵焼きとドミグラスっぽいソースが合う。考えてみれば、ハンバーグにはつなぎにパン粉を入れるのだ。揚げて不味いわけがない。なるほど。これは目から鱗だ。
サラダの脇に福神漬けがちょこんと置かれている。ああ、やはり、ハンバーグカツピラフにするべきだったか?白飯よりも美味そうだ。どんぶり飯にはごま塩がかかっていたので、なおさらピラフにしなかったことが悔やまれる。
ご飯を少し残してしまったが、優しい味の定食に心が落ち着く。連日の外食で疲れた胃が、癒される気がする。次回があれば、迷わずにハンバーグカツピラフなのだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)