JALファーストクラスランチの悲劇
昨晩は西麻布で食事を済ませると、さらっと帰った。社長は二日前に出雲でかなり飲まされたらしい。あそこは酒と神と蕎麦しかない。店でもノンアルコールばかり飲んでいたので、二軒目もなくお開きとなった。
本日の目的地は砂川なのだが、その前に岩見沢に寄ることにしていた。飛行機は羽田発10時半の千歳行き、JALのファーストクラスだ。
ランチが楽しみだ。
ところが、出てきた食事は先日食べたメニューと同じだ。二度目なので、新鮮さはまったくない。手の内が分かっている手品を見るようなものだ。
無念。
朝食抜きで早めのランチを食べたのだ。いや、これはランチではない。私にとってはモーニングだ。ランチはこれからだ。だとするならば、14時頃につくであろう岩見沢で食べればいい。なんたって行き先はラーメン店。久しく行っていない。最後に食べたのは平成28年10月7日だ。忘れもしない。
あれから二年近くが過ぎたのか。感慨深いな。
新千歳空港から快速エアポートで札幌まで行くと、特急スーパーカムイは出発した直後だった。いしかりライナーに乗り、のんびりと岩見沢に向かった。
岩見沢市 宇宙軒
ここだ、ここだ。食事が目的で来たわけではないが、久しぶり訪れるのだからもちろんラーメンが食べたい。店内に入ると、カウンター席に勝手に座った。
店主は知り合いだ。勝手知ったるなのだ。
さて、何を食べようか。
初心者は味噌ラーメンを頼むだろう。悪くない考えだ。しかし、この店のイチオシは塩ラーメンである。しかもバターをダブルの別盛りにした上でのチャーシュー麺。この店のチャーシュー、これがまた絶品なのですよ。
オーダーしてから10分ほどが過ぎただろうか。来た来た。肉で麺が見えない。波布食堂の野菜そばを彷彿とさせる。どんぶりからはみ出した肉がダンボの耳のようだ。狙ってるのだろうか。このままでは、麺を食べることができない。スープすらレンゲで救えない。
まずはこの薄くてでかいチャーシューを一枚とる。おお!中から麺が現れた。そのまま肉を一枚、パクリ。柔らかい。ものすごく柔らかい。噛み締めると、肉の旨味が口の中にあふれる。
まいうー。
これぞ、ザ・チャーシュー。店主が夜な夜な肩をアイシング(氷で冷やすこと)しながら仕込む絶品なのだ。命を削りながら作られた逸品なのだ。お盆は店主が倒れるまで休みがない、死のロードなのだ。これ中小零細企業の現状なのだ。地方創生とか言っている政治家や官僚は、分かっているのか、この現実を。
時計の針は14時半を指している。客はひっきりなしに入ってくる。こんな時間にラーメンを食べたら、夕飯が食べられないだろうが。人のことを言えた義理ではないが、夜は久し振りに真椎さんと飲むので、私は別に構わないのだ。
スープを飲む。うん、滋養にあふれた優しい味。味噌汁のようだ。二杯、三杯。
胃にしみる。
細くも太くもない典型的なちぢれ麺を食べる。適度なコシの滑らかな食感。スープがよく絡む。具はシャキシャキのもやしとネギのみ。メンマはない。奇をてらわない、引き算でギリギリの線を狙ったラーメンだ。
ここで別盛りのバターを半分入れる。よく溶かしながらスープを飲む。
ああ。
コクの深みが増して、ポタージュのようだ。ということはコショウも合うはずだ。かけてみる。飲んでみる。
ああ。
コショウの香りとバターのコクがスープに相まって、極上の味になる。
これはたまらん。
チャーシューを食べ、麺をすすり、スープを飲む。ルーティンをひたすら繰り返す。おやつのようにするすると胃に入っていく。パンチのない、インパクトのない、自然体でホッとするラーメン。店主の人柄が味にも反映されている。
食べ進むうちに麺が無くなった。残るはスープとチャーシューだ。肉に始まり肉に終わる。スープを飲んで完食。
美味かった。
お土産用に買って帰ろうとしたら、生麺しかないとのこと。賞味期限が短いので、持って帰れない。明日帰るのなら大丈夫なのに…無念。
この店のサイドメニューはシュウマイだ。餃子ではなく、焼売なのだ。しかし、今回はパスだ。また来ることも必ずあるので、その時にいただこうではないか。
ざわちん、頑張れ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)