朝光街 膳亭
取引先の会議が終わり、食事に行くことになった。待っている間に会議室から見える、中国銀行のビルの谷間に沈む夕日が美しい。ビルから下を見ると、いつもより交通量が少ない気がする。
目的地は香港大学の近くにある朝光街だが、地下鉄で行くと山を一つ越えなければならないし、今日は交通量がいつもより少ないので、バスで行くことになった。そしてついた先は「膳亭」。最近できた潮州料理の店だということだ。
食前の儀式
食前のウーロン茶を一杯飲んだらビールで乾杯だ。ここは1664というオランダのビールが一押しとのことで、それを飲んでみる。フルーティーなピルスナーだ。
潮州料理。鹵水(ルーシュイ)料理で有名だ。これは「鹵水」と呼ばれるタレに具材を漬け込んだものである。鹵水は醤油、酒、砂糖をベースにショウガ、八角、桂皮、陳皮等のハーブを加えたものだ。潮州料理は冷菜が美味い。私が忘れられない潮州料理は、昔、二十世紀の頃に台北駅前にあった店だ。そこで何度も食べたガチョウの血がとにかく美味い。血を固めたものを中国語では血豆腐と呼ぶのだが、これの鹵水料理。食感はプルンプルン、食べれば味わい深い。いつかもう一度食べたいと思っているのだが、まだ叶わぬ夢である。
その夢がここなら叶うやもしれぬ。
鹵水鵝片
ビールで乾杯の後はガチョウだ。ガチョウ肉のスライスを鹵水に漬けたものだ。美味い。八角の効いたこの香り、私は大好きなのだが、日本人は苦手な人も多いと思う。続いて鹵水豆腐、揚げ豆腐はぷるぷるだ。京都の豆腐のようだ。写真を撮るのを忘れてしまった。
鹵水鵝肝
鹵水でガチョウのレバーは定番だ。メニューには書いてなかったので、店員に血豆腐があるかを尋ねた。
ありません、か。
無念。
潮式煎蠔烙
ベビーオイスターのオムレツである。ようは間引きした稚貝なのだろう。ホタテにも同様なものがある。北海道で食べたぞ。玉子とホタテの相性がなかなかのもの。身が小さくてもしっかりと牡蠣の香りと味わいがあるのだ。
ちょっとトイレ…
店に入った時から、入口カウンターに置かれている男性用女性用カードが気になっていたのだが、トイレに行こうとしたら、入口のカードを持って行くように注意された。鍵になっている。これがないとトイレに入れないのだ。
魚の天ぷら
カリカリして、酒のつまみにいい。
鹵水蛋
玉子である。日本の煮卵とは別物。トンポーローの煮玉子に近いだろうか。
凉拌鹵猪耳
豚耳はとろみがついていて、なんか期待していた味と違った。鹵水だとこうなるのだろう。うーん、普通の燻製のほうが好みだ。沖縄でもミミガー、チラガーとして食されるが、ネギとラー油で和えたものが好きなのである。
牛肉の揚げ炒め
料理名を覚えていないが、牛肉で作った酢豚みたいな料理だ。店がイチオシというので食べてみたが、それほどでもないように思う。もちろん、まずいことはない。期待感が先行してしまっただけだ。
碧綠川椒雞
鶏肉の花椒炒め。川椒とは四川省産の花椒のことだ。碧綠は濃い緑色のことで、揚げた葉野菜を添えるからだろう。これは真珠草とのことだが美味い。
店もきれいだし。サービスもいいし、ワインもよかった。三人でワインを二本空けたし、さあ、次に飲みに行きましょう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)