鍋料理

青森県八戸市 本八戸の夜

北のご馳走屋

この日は本八戸で会食だ。会場は北のご馳走屋。なかなかメニューが豊富で、青森が食材に満ちていることが一目でわかる。

我々はこちらではなく、離れで会食。静かだが、なんだか暗い。こちらの方が気兼ねなく食べれるからいいか。室内はまったく問題ない。

この日は寒波襲来で、八戸も雪が降っている。冬に来るのは初めてなので、こんなものかと思っていたら、地元民は、

「八戸は雪が降らない。」

と口々に言う。外は大雪だ。あちこちで大渋滞していると言う。この日は八人の出席だが、時間になっても誰も来ない。10分過ぎて二人が到着。飲み始める。七時半に一人到着。外はすごいことになってると言う。

この日、下北半島の先端に位置し、日本で最も平均寿命が短い自治体であるむつ市、マグロで有名な大間がある街と言った方が通じるだろうか。イタコの口寄せで有名な恐山もむつ市にある。そのむつ市から八戸に二名が向かっている。やはり渋滞に巻き込まれていた。

飲みながら、誰かの電話が鳴ってるなあと思っていたら、私の電話も鳴り出した。いや、全員の電話がけたたましく鳴り始めた。地震の緊急速報だ。まもなく揺れだした。これくらい大したことないかと思っていたら、二人が建物から出た方がいいのではないかと言い出した。揺れは大きくなることなく収まったが、次に私以外の全員が言った。

「津波は大丈夫か?」

八戸も東日本大震災で大きな被害にあった街である。あの日、北京日本人学校に通う子供たちの卒業式のために、北京にいた私は、繰り返し繰り返し放映される津波の映像を見るより他なかった。やがて津波の心配はないとの報道があり、一同、一安心。

結局、全員がそろったのは八時過ぎ。鍋料理なので、食事を食べることができず、私はすでにビールで腹一杯、ハイボールで酔っ払い。沖縄であれば時間までに全員がそろうはずがないので、容赦なく鍋も食べている。出された料理はすでに冷めてしまっていた。汁物が欲しかった私は鍋だけ食べる。

ひっつみ汁。名前だけは「とりぱん」を読んで知っていた。食べるのは初めてだ。あの作者は岩手の人間だ。八戸は岩手文化だと実感する。地元民に言わせれば、南部藩だと言う。そういえば、八戸の他に二戸も七戸もある。順番に並んでるわけでもないのに、不思議な地名と思っていたが、その謎の答えをひょんなところで見つけた。

まさに「へー」である。トリビアである。

ひっつみ汁は自然な甘めの味付け、野菜たっぷり。「ひっつみ」はすいとんのことだ。大分や熊本なら「だご汁」のだご(だんご)である。寒い日は鍋に限るね。北海道だと部屋の中がクソ暑いので、鍋を食べる気にもならない。

沖縄料理 ちゅら屋

和やかに会食も終わり、二軒目に行こうという。建物中には多くの飲食店があるのに、人影がまったく見当たらない。雪でみんな帰ってるんだろうという。やはり普段は降らないところなのかと実感する。建物から出ると雪は小ぶりになっていた。数分歩いて着いた先は、沖縄料理「ちゅら屋」である。

沖縄県民の私に沖縄料理を食べさせるというのか。なかなか面白い。受けて立とうではないか。当然、酒は島だ。沖縄県民は泡盛のことを島酒(しまざけ)と呼ぶ。略して「島(しま)」だ。

「何呑む?」
「俺、島。」

沖縄の飲み屋で一般的に交わされる会話である。なんと、舞富名(まいふな)が置いてあるではないか。通だ。だが、ここは久しぶりに残波(ざんぱ)ホワイト、通称「ざんしろ」にする。癖のない酒だ。つまみはどうしようか。とりあえず島らっきょうに「ヒラヤチー」だ。ヒラヤーチーのことだろう。この店のお父さんが沖縄の方だとのことだが、どこだかは聞いた気がするが忘れた。

島炭酸割りで乾杯する。泡盛を炭酸で割ったものだ。沖縄の義父も常に泡盛を炭酸で割る。もちろん、強炭酸だ。島らっきょうに醤油をかけるなと止められる。しょっぱい。さすが雪国、基本塩っぱいかと思いつつ、でも先ほどの店は味付けいい感じだなと、よく分からなくなる。味は沖縄と同じ。

雪の降る中、厚着で沖縄料理と泡盛。不思議だ。地元では絶対にありえない光景だ。沖縄には身体を温める料理もない。ま、腹も一杯なので、飲めればいいか。

気がつけばいい時間だ。楽しい時はあっという間に過ぎる。普段とは違う、さまざまな八戸の顔を見ることができた気がする。次は春か秋に来てみたいものだ。

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