郊外の宿
いつもは街中に宿を取るのだが、たまには郊外もいいかと、深く考えずに宿をとった。鹿児島空港からレンタカーで着いた先は、畑の真ん中にポツンと建つ、渋い旅館だ。古民家を改造した、わずか4部屋のみの小さな宿。私の部屋は二階だが、エレベーターなどないので、旅館の兄さんが部屋まで荷物を運んでくれた。
露天風呂
こう言う宿は得てして古くて、清潔でも設備が整っていなかったりするが、ここは二年前にリニューアルしたばかり。色々と揃っていて不便さはない。Wi-Fiも使える。ただ、机とコンセントが離れているために、パソコンの電源の確保が難しかった。寝てる間に枕元で充電すれば住む話ではある。
せっかくなので一風呂浴びる。離れにある、開放感あふれる源泉掛け流しの風呂だ。湯量の関係でシャワーが出ないのが不便ではあるが、専用の掛け湯を使えば解決する。
落ち着く〜。
風呂から上がると、スーツに着替えて外出した。そもそもこの宿はビジネスに使うものではない。一人静かに、家族で楽しく過ごす宿だ。食事も良さそうだ。そこは考えが浅かった。
まあいい。
宿の方には0時までには戻ると告げたのだが、実際に宿に戻ったのは0時過ぎだった。
朝食と池と鯉
翌朝、八時に予約した朝食を食べに一階に降りる。個室に通される。和室だが、テーブルと椅子なのが嬉しい。窓を開けると廊下があり、外側には池が見える。
食事が運ばれてきた。なかなか美味そうだ。
海苔がでかい。旅館やホテルによくあるちまちましたやつではない。味噌汁は白味噌で少し甘めか。甘い、と感じるほどではない。具はワカメとキノコ。たっぷりと入っている。キャラブキと小魚の甘露煮は甘すぎず、しょっぱ過ぎず、私にはちょうどいい。ご飯のおかずに最適だ。そもそも私はキャラブキが大好きなのだ。大好きと言っても大量に食べるわけではないのだが、あるとついつい食べてしまう。
納豆は調味料を加えてすでに混ぜてある。ネギなどの薬味は無し。海苔で巻いて食べてしまうのだ。納豆巻なのだ。
豆腐は木綿のような舌触りなのに見た目は絹ごしだ。味が濃い。薬味はミョウガとしょうが。妙か大好きの私には嬉しい一品なのだ。もちろん豆腐も大好きなのだ。豆腐は土地土地によって違うので、味わいを通じて地域を感じることができるのも醍醐味なのだ。
塩サバは薄塩で大根おろしに醤油を少しかけて食べる。目玉焼きは添えてある野菜がみずみずしくてシャキシャキだ。ホテルの朝食バイキングのサラダではこうはならない。目玉焼きの黄身は中まで火が通っているが、しっとりとしていて煮卵のようだ。
緑茶が美味しい。茶葉の甘さが口の中に広がる。水がいいからなのだろうか。ここは平成水の百選に選ばれているそうだ。
漬物も美味い。梅干しは本物だ。蜜などでつけたやつではない。塩とシソだけでつけたものだが、塩のジャリジャリした感じもなく、口当たりなめらかだ。
見た目よりボリュームがある。食べきれない。デザートはプレーンヨーグルトにバナナを入れたものだ。ヘルシーだ。バナナの甘さがヨーグルトにほどよく馴染んで美味いのだが、お腹いっぱいで入らない。
あー、お茶がうまい。
地元で手に入る食材をうまく生かした、力みのない、家庭的な料理だ。日本の食卓だ。
食事処の窓から見える、池の景色と雨音を聴きながらまったりとする。雨の日は好きではない。せっかく人吉に来たのだから晴れてくれればと思っていたのだが、今は雨の人吉もいいものだと感じている。池に降る雨が水面を叩く音が心地よいのだ。気温もクーラーなしでいいくらい。昨日まで沖縄や香港といった蒸し暑いところにいた体には、この気候は優しすぎる。癒される。
さて、沖縄に帰るぞ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)