羽田空港 七だし屋 明太ご飯

東京都大田区 羽田空港 七だし屋 塩そば

北海道へ

週が明け、取引先の来沖を終えた翌日は、北海道へと向かう旅だ。昨年は札幌に泊まることが多かったのだが、今年は少ない。本日の目的地は羽田乗り継ぎで北海道、帯広へと向かうのだ。

今日もなんとか九時前に保育園に行くことができたので、その足で妻に空港まで送ってもらう。車中で妻としばし討議。議題は本日の私のランチ。乗り継ぎは北ウイングになるから、ランチは七だし屋をおいて他にない。塩ラーメンとやまやの明太子ご飯にするのだと持論を展開した。加えて、ベイサイドカフェの蕎麦は一度食べたが、高級立ち食いそばの域を出ず、羽田空港で旨い蕎麦にありつくのは不可能なのだと結論づけた。妻は特に異議を唱えず、私の意見は承認された。ただ、付帯意見として、一言だけ妻が述べた。

「私も食べたい。」

乗り継ぎをスムーズに済ませるために、事前に乗り換えルートを調査し、メニューをシミュレーションしておいたのが、功を奏したのだ。

入念な準備をしておくからこそ、行き当たりばったりを防ぎ、羽田に降り立ってから何を食べるのか、困惑することも、ターミナルを右往左往した挙句に食べたいものが見つからず、途方に暮れ、時間だけが過ぎ、憔悴しきった上にランチを逃すなどという、愚の骨頂を犯さずに済むのである。

羽田空港 第1ターミナル 北ウイング 七だし屋

飛行機が羽田に着陸すると、私は乗り継ぎ便のゲートに向かった。徒歩数分で到着。ここだ。

念のためにメニューを確認する。塩そばにやまや明太子ご飯。間違いない。明太子はやまやでもふくやでも構わない。ひらがなの商標や社名にも拘らない。しば漬けならば、幼い頃から食べつけている二条坂を下った先の伊勢屋にこだわるが、明太子は大人になってから食べたものであるし、私にとってソウルフードでもない。母の実家である北海道から毎年送られてきた筋子とタラコを食べて育ったので、私の中で明太子の立ち位置は少々複雑である。

店内に入ると、前回とは打って変わって、かなり混雑している。ほぼ満席。ちょうど客が去ったばかりの空いたカウンター席を確保すると、注文カウンターで商品をオーダーし、呼び出しブザーを受け取ると、自席に戻り、その時を待った。

数分が経った。満席だった店内から、食べ終わった客が立ち去っていく。店を訪れたころよりは席に余裕が出てきた気がする。不意にブザーがなった。ランチの準備が整ったのだな。商品カウンターに行き、注文品を受け取る。うーん、いい香りだ。

塩そば

再び自席に戻る。着席する。眼前のラーメンと飯を一瞥する。昼宴の始まりである。さあ、食べようではないか。ゆずの香りが匂い立つ、上品で豊かなだしが効いた、優しい味のスープ。連日の飲み会で疲れた体に染み渡るかのようだ。まるでお吸い物である。

麺はモチモチで喉越し良く…ない。一部の麺がほぐれずにゴワゴワだ。これではすいとんである。だんご汁である。せっかくのこだわりも、こんなゆで方では台無しだ。がっかりだ。太いのに薄味で味を邪魔せず柔らかいメンマには好感がモテるのに、麺はあちこち団子状だ。

口の中に広がるゆずの香りと豊かなだしの味わいにうっとりした後には、ゆで加減がバラバラのひどい麺が私を現実に引き戻す。夢心地のひとときを、髪を引っぱられて起こされるかのような、粗雑で乱暴な行為に幻滅してしまうのだ。

低温調理の柔らかなチャーシューは、噛みしめるたびに濃密な肉の旨みが口中に広がる。美味いなあ。

生姜も加えてみたが、入れない方が好みである。生姜の刺激が強すぎて繊細な味のバランスを壊している。それに、添えられているショウガは、すりおろしたばかりの生ショウガではなく、チューブ製品と同じもので、辛味が立ちすぎる。胡椒を入れてみようか迷ったが、繊細なだしの風味を壊してしまいそうなので、やめることにした。

明太ご飯

明太ご飯は鉄板だ。やまやの明太子に九条ネギ、刻みのり。明太子の辛味と旨味にネギの刺激と香りが加わり、海苔の風味と相まって複雑かつリッチな味わいをご飯がまとめる。しらすご飯の時はスプーンかついていた気がするのだが、今回は付いていない。

なぜだ?

しらすご飯も明太ご飯も、箸よりスプーンの方が食べやすい。事実、箸ではなかなか掴みにくい。

まあいい。

明太ご飯に続いてラーメンスープを口に流し込む。刺激的な明太ご飯とは対象的な、滋味深い落ち着いた味わいとが渾然一体となり、口の中でひときわ豊かな風味を繰り広げたのちに、夏の花火のごとく、静かに消えゆく。明太子の辛味だけが名残惜しそうに後を引く。

スープをすべて飲み干して完食である。

七だし屋に物申す

ラーメンとはセントラルキッチンと非常に相性のいい料理である。麺は製麺所、チャーシューとメンマ、スープは工場で生産、包装。ノリや刻み海苔、刻みネギ、おろし生姜は食材店が納品する。この店のおろし生姜はチューブのものと同じであるから、店頭でおろしているわけではない。スタッフの仕事は麺を茹で、スープをお湯で割り、どんぶりにトッピングするだけである。調理に包丁すら不要なのである。

団子状にくっついた麺

おまけにラーメンならば、蕎麦やうどんのように、茹でたあとに冷水で締める必要もない。湯切りをしてどんぶりに入れるだけだ。

なのに、麺をゆでることすらままならないのが現状なのだろうか。デポに麺を入れて鍋に入れ、箸でほぐすだけの作業がどれほど難しいのか。生の麺をまともに調理できないのであれば、ゆで麺を冷凍して出荷し、店頭ではお湯で解凍するだけにしなければならないだろう。生産には大掛かりな設備が必要となり、コスト増を招くので無理な話だ。

ならば、店頭でのオペレーションをきっちりと管理してほしい。旅の途中の貴重な一食を台無しにされるのは、我慢ならないのだ。

運営会社には猛省を求めたい。

(Visited 16 times, 1 visits today)