岡田屋 てんぷら

東京都港区 浜松町駅 天ぷら 岡田家 てんぷら定食

浜松町地下ダンジョン

モノレール浜松町駅に隣接する世界貿易センタービルの地下に飲食店街がある。このビルが完成したのが1970年、半世紀前に竣工した建築物なのである。そしてこのビルの南側に建設中の新しい建物が完成したら、解体されて建替え予定なのである。完成予定は2026年なのだとか。

一階のおしゃれなデザインの階段を降りて地下飲食店街に足を踏み入れると、その雑多な雰囲気が歴史を感じさせてくれる。私はここをひそかに地下ダンジョンと命名した。2年後には閉鎖され、7年後にはリニューアルオープンとのことだが、隣に完成した新しいビルの飲食店街がいまいちなのを考えると、この地下ダンジョンもまた使い勝手が悪くなるのかもしれない。まあ、それまで浜松町界隈に自分がいるのかどうかも分からない。

5年前に現状は想像できなかった。私の人生は常にこうだ。1年後ですら予測できないような生き方をしてきたし、これからもしていくのだろう。毎日、会社に行ってランチを食べて、定時に家に帰り、たまに残業したり、同僚と飲みに行ったり、休日には家族サービス、家でゴロゴロしていると妻に粗大ごみとののしられ…無理だ。毎日が規則正しいルーチンをこなす人生は、息が詰まる。家事は私の気分転換であり、家族サービスなのだ。

さて、何を食べようか。ダンジョンをさまよう。刀削麺も気になるが、店の前でなにか違う気がして入るのを止めた。タイ料理は気分ではない。とんかつも違う。うーむ。

ほう、天ぷらか。しかも渋い店構えだ。職人のこだわりと店主の理念が感じられるではないか。よし、ここにしよう。

天ぷら 岡田家

お昼時を過ぎたとあって、店内に客はいなかった。カウンターとテーブル二卓の小さな店。BGMは童謡だ。メリーさんの羊、月(出た出た月が~)など。ある意味斬新だ。店のスタッフは全員、私よりもだいぶ先輩である。

ランチは白の天丼及び青の上天丼の二種類のようだが、あえて天ぷら定食をセレクト。

さあ、どうだろうか。この店は美味いという私の勘は当たりだろうか。厨房では大ベテランの職人、おそらく店主が天ぷらを揚げていた。揚げたてを食べられるのは幸せなことなのだ。揚げ置きが許されるのは立ち食い蕎麦だけなのだ。

カウンターの端っこに置かれているピンクの電話。同名の芸人がいたような気がする。公衆電話なんて、もう長い間、使ったことがない。こちらも年季が入っているようだ。

テーブルには天塩と七味。漬物と天つゆ、薬味が運ばれてきた。盛り上がってきたぞ、カウンターで揚げたての天ぷらを食べるのは久しぶりだ。江戸前だろうか。曲はお化けなんてないさに変わる。

天ぷら定食

天ぷらが運ばれてきた。湯気が立って見た目にも熱々なのが分かる。白っぽくカラッと揚がっているのがいい。少し色がついて焦げたような天ぷらは好みではないのだ。

ご飯おかわり自由。味噌汁はホッとする味。塩加減がちょうどいい。シャクシャクする薬味切りされた長ネギの食感と香りが、これから始まる食宴を暗示しているかのようだ。

天ぷらを天つゆにつけていただく。つゆの味付けは辛口めだ。カボチャはホクホクなのだが甘味が控えめだ。もっと甘いイメージがあるのだが、素材の問題だろうか。イカは柔らかいが、少し大味で水っぽい。見た目通りに白い衣がサクサクで、揚げ具合はなかなかのものだ。玉ねぎは甘すぎず硬くならずだが、好みとしてはもっと甘くて柔らかくていい。

うーむ、ここまではなんだか素材の魅力を引き出していない気がしてたまらない。ふと、海老天を天塩につけてみた。

なんだ、こりゃ?!

激しく美味い!私の中に一つの仮説が浮かんだ。検証するべく、ナス天を天つゆにつけて食べてみる。やはり味気ない。疑念は確信に変わった。この店の天ぷらは塩で食べるべきなのだ!

インゲン、にんじん、玉ねぎ、カボチャ、ミョウガのかき揚げ。最終確認、これらの具材をすべて天つゆと天塩で食べ比べてみる。圧倒的に塩だ。Zガンダムと初代ザクくらいの差だ。

BGMはお馬の歌だ。バッパカ走る、どうしてなのか誰も知らない。私は天ぷらをとっとと食べる。

キスも塩で食べるほうがうまい。カリフワの衣の中からしっとりとしたキスの身、塩がしっかりと素材の魅力を引き出す。いい仕事してますねえ。エビはぷりっぷりだ。食べれば濃厚な香りが口の中に広がっていく。ただ、塩のつけすぎに注意だ。塩分過多な上に素材の味を殺してしまう。

糠漬けはエグみなく、酸味も控えめ、人参が見事、大根もきゅうりも素晴らしい。もっと食べたくなる。買って帰りたいくらいだ。ご飯のお代わりは我慢した。

おしぼりがないので、持参しなければならないのが注意点であるが、次回は夜に来てみたい。

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