浜松町 蕎麦屋 更科
繋温泉を後にして、新幹線で東京へ。会社で打ち合わせを済ませたら、午後の便で沖縄に帰るのだ。昨晩は一人でまったりしたので、よく眠れた。布団はいいね。東京に着くまで、パソコンで仕事の資料を作りながら過ごす。二時間はあっと言う間だ。
これでやっと沖縄に帰れる。今回は二泊だったので、短い方だが、早く家に帰りたい。打合せは午後イチなので、必然的にランチは会社に着く前に摂ることになる。
さて、何を食べようか。
昨日は三陸の海の幸を堪能した。かと言って、肉をガッツリという気分でもない。
うーむ。
蕎麦か。
うん、蕎麦にしよう。ならば行きたい店が二つある。一つは通り道、もう一つは寄り道になる。限られた時間で食べるのならば、通り道にある店で食べるのが合理的というものだ。浜松町駅の金杉橋口を出て、線路沿いに少しだけ歩き、すぐに右折。第一京浜との交差点に位置するは「蕎麦 更科」。
ここだ。
私は蕎麦の中でも更科が特に好きだ。白くて喉ごしの良い二八蕎麦。子どもの頃から食べていた蕎麦だ。十割蕎麦は口に合うものが少ない。黒い田舎蕎麦は論外だ。食物は嗜好品だから、これが正しいというものはない。各自が正しいと思うものを、自分だけに言い聞かせればそれで良いのだ。
北海道には白くて細くて美しい蕎麦を打つ店がいくつもある。もちろん、道外にもあることはあるが、私の活動範囲からだいぶ逸れる。例えば、「せきざわ」の蕎麦は大好きだが、わざわざ小布施まで食べにいくだけの時間はない。仕事で近くまで行き、立ち寄る時間があれば食べに行く。そんな感じだ。
さあて、どんな蕎麦と出会えるのだろうか。期待を込めて店に入ろうとすると私の目に入ってきた、のれんの下に吊るされた札に書かれたメッセージだ。
「食券をお求めください。」
ふむ、ならばドアを開ける前に、食べるものを決めねばならぬ。
天丼。
カレーライス。
しょうが焼き丼。
肉みそ丼。
うーむ、ここはランチもりそばミニ天丼セット920円かな。
ドアを開けて店に入る。食券機を探す…が、見当たらない。店員のおばちゃんが声をかけてきた。
「こちらで食券を買ってください。」
おばちゃんから買うシステムのようだ。もりそばミニ天丼セットください。食券を手渡された。テーブル席に案内される。昼過ぎということで、店内はそこそこ混んでいる。
もりそばミニ天丼セット
さほど待たずに、私のランチが運ばれてきた。
細麺の二八蕎麦。つゆは辛口。江戸前だ。そばに少しつけて食べる。うん。喉越しも香りもいい。少しぬるいのは連日の猛暑で水道が温かくなっているからだろう。仕方ない。
天丼はタレ甘め。固めに炊かれたご飯が一粒一粒立っていてツヤツヤしてうまい。ピーマンにナスにエビ天。ん?エビ天ではない。プチかき揚げ?でもエビが大きい。プリップリで歯ごたえがあるくらいだ。衣部分がかき揚げっぽくなっている。斬新だな。甘いタレと漬物の塩味のマッチングがいいね。甘いしょっぱいは無限ループの基本だ。
蕎麦が絡んでしまった。このボリュームだ。しかも、大盛りではないのだ。仕方ない。お冷やをかけて蕎麦をほぐす。うーん、蕎麦の味が落ちてしまった。しっかりと水を切った蕎麦に水をかけてしまったから、仕方がないか。でも、ここまで変わるものか。江戸前は辛口のつゆだから、蕎麦をつゆに軽くつけるだけだ。口に入るときは、つゆの付いていないところ、水をかけたところから入るので、それが雑味を加えてしまうのか。水道水が蕎麦の香りを邪魔している。
ランチだから仕方がないのか…ううう。不覚。
やけくそで蕎麦を全部つゆに浸してみる。口に入れる。当たり前だが、しょっぱい。蕎麦の香りなど微塵もない。つゆ百パーセントだ。君は千パーセントだ。
半透明な蕎麦湯を蕎麦猪口にそそぐ。蕎麦つゆ多すぎだ。どんぶり半分空けて、さらに蕎麦湯を投入。うん。ホッとするなあ。
さーて、とっとと打ち合わせをすませて、自宅に帰ろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)