ジャンカレー

東京都港区 浜松町駅 ジャンカレー 倍満カレー

軽く何食べよう?

徳島は昼前に離陸したJALの機体は紀伊半島の南端付近を通り抜け、相模灘を飛んで富士山を左手に見ながら房総半島より羽田空港に着陸する。紀伊半島の南側はリアス式海岸だ。交通の便は悪いが魚介類がうまい。しばし訪れていない。いや、もう何十年も訪れていない。昔と同じく、いまだに高速道路はつながっていないが、南紀白浜空港がある。東京からもアクセスは悪くない、いずれ訪れることになるだろう。

白浜半島と南紀白浜空港

そんなことを思いつつ、定刻通り12時48分に着陸すると、12時55分に飛行機から降りることができた。予定通りだ。そのままモノレールで浜松町に向かう。ランチだ。今朝は7時に軽く朝食を食べたので、がっつりと食べたいところだが、夕方は早い時間から忘年会だ。焼肉だ。ごちそうだ。

軽く食べると言えば麺類が思い浮かぶ。だが、高血圧の私にラーメンは塩分が濃すぎてダメだ。久しぶりに蕎麦を食べようかと思ったが、浜松町では気軽に更科蕎麦を食べられる店が見つからない。

モノレールの改札を出て、駅ビル内を歩きながら、何を食べようかと思う私の目の前に現れたカレーの看板。

ジャンカレー

そうか、ここに店があったな。

店頭に飾られたディスプレイを見てみる。なんだか食欲をそそられる。

メニュー

店頭でメニューを確認する。

ん?

倍満カレーに目を奪われる。ネパールのラムカレーとある。本番のシェフが煮込んだ本格派とも書いてある。バイマン、ネパール語で何を意味するのか。心躍り、バイマンに惹かれた私は、もうカレーを食べる事しか頭になかった。

そのまま何の疑問も抱かずに、店にドアを開けた。店はそこそこ混んでいた。

一人掛けの席に座ると、改めてメニューを見た。満貫カレー、役満カレー、倍満カレー、チョンボカレー、大三元カレー、つもカレー。静岡県清水市のソウルフードである「もつカレー」の間違いだと思っていたが、つもカレーで正しかった。

なんて事は無い。すべて麻雀の役の名称である。

だから店名がジャンカレーなのかと納得してしまった。そうなると倍満でいいのか迷いが生じる。確かに倍満は子でも16000点だ。だが、役満や大三元の方が点が高い。上がる確率もはるかに低い。九蓮宝燈など、上がれるのはドラマや小説、漫画の中だけだ。身近で上がった人を寡聞にして知らない。

どうしよう。

そのときだった。右手に座っていた客が無感情に注文する声が聞こえた。迷っていた私にも決心がついた。同じく倍満カレーだ。もう迷わない。

店内は古いアメリカ映画のサントラが流れていた。

静かだ。

この扉一枚向こうは喧騒に溢れていると言うのに、まるで時間の流れが異なるようだ。昭和レトロ。しかもこの店は夜は飲み屋になるらしい。店員が私に気づいてくれた。倍満カレーとサラダを注文。テーブルの上には中濃ソースに福神漬け。カレーの定番アイテムがきっちりと揃っている。

倍満カレー

先にサラダが運ばれてきた。ああ、ドレッシングがたっぷりとかかっている。なぜだろうか、やはりランチは客の回転が命だからか、配膳を手早く済ませるには最初からかけておけばいい。ドレッシング不要な客は希少であろう。

だが、サラダ自体は見るからにうまそうだ。オニオンドレッシングがかかったみずみずしいシャキシャキのベジタブル。私の体に染み込むように広がっていくフレッシュな味わい。生野菜は良い。サラダが素晴らしい。

しばらくして、ついに倍満カレーのお出ましだ。スパイシーの中にほのかに漂う羊の匂い。これだよ。帯広名物「カレーのインディアン」を想起させる。

カレールーがいわゆるグルテンフリーである。細かく刻んだ野菜とラム肉をスパイスでよく煮込んだようなカレーだ。もうやんカレーに似ているようにも思う。グレービーボートに満たされたカレーをスプーンですくい、ライス皿に満たす。ルーが入っていないのでサラサラになる。福神漬けを載せる…おっと。今の私は漬物がご法度の身であった。まだまだ漬物なしの生活に慣れない未熟な自分がいた。

少量だけなら、彩りの為だからと自分に言い聞かせ、福神漬けをほんの少しだけ、皿にとる。赤、白、茶色のトリコロール。カレーの基本色が揃った。

さらさらのカレーに浸したライスをスプーンですくい上げる。口に運ぶ。スパイシーだ。日本のカレーとは全く違う。中辛と書いてあるが、けっこうな刺激である。これを中辛と主張するのは、日本人には受け入れがたいものがあるだろう。私はなかなか好きだ。辛さが後を引く。まさにエスニックなカレーである。ラム肉は柔らかいが噛み切れない。噛み締めればかみ締めるほど、羊の旨味がスパイシーさとともに口の中に広がる。肉の繊維が太くて、やたらと歯に挟まる。食べるのがめんどくさい。仕方ない、爪楊枝で肉の繊維を歯の隙間から取り除きつつ、カレーを食べ進める。

漬物の代わりに、サラダを箸休めにする。サラサラカレーを食べ、ラム肉を噛み締め、みずみずしいサラダを食べる。このローテーションだ。この味わいは、確かに本場だ。店を切り盛りしてるのは二人の女性のようだ。一人は日本人の年配の方、もう一人はネパール人だろうか。色は少々浅黒いが肌艶が良く、きめの細かい肌をした若い女性だった。

もしかして、この子がマスターシェフなのだろうか?

うまい料理を作るのに年齢は関係ない。小学生でも天才料理人が、漫画の中ではいくらでもいる。現実世界は知らない。おそらくいるだろう。私ですら9歳からキッチンに立って、母の代わりをしていたくらいだ。

夜にもぜひ店を訪れてみたい。

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