うなぎ藤田
朝、目がさめると名古屋のキャバ嬢からLINEが来ていた。
「日本勝ったね!」
ああ、昨晩のW杯、コロンビア戦ね。そうなんだ。あまり興味ないけど。時計を見ると八時半。朝飯食えないな。そのまま、SIXPADをつけながら仕事をする。
さて、ランチは何を食べようか。餃子はないな。うなぎだよ。昨日、駅前にうまそうな店を見つけたからそこにしよう。仕事をして11時半にホテルを出た。外は大雨だ。傘をさして駅まで歩く。あった。ここだ。エレベーターで二階に上がると、大きな入口があった。窓から職人の調理姿を覗くことができる。暖簾をくぐるとうなぎの香りが漂う。
「お一人様、こちらにどうぞ。」
メニュー
カウンター席の一番奥に通される。さて、どれを食べようか。もちろんうな重だ。天ぷらや茶漬けはない。
うな重のランクは何が違うのか尋ねる。川がうなぎ三分の二、花が少し多くて、山が一尾ということなので、山にする。
この店の発祥は明治二十五年。初代が浜名湖で獲れたうなぎを、何日もかけて徒歩で長野県飯田市まで行商していたそうだ。その後、二代目が浜名湖に養鰻場を作り、三代目からは調理も手がけるようになったとのことだ。
うな重(山)
やはりうなぎは注文してもすぐには出てこない。この待つ時間がもどかしい。おお、ようやく私のうなぎちゃんが運ばれてきたぞ。どれどれ。フタを取る。うん。いいねえ、美味そうだよ。
まずは山椒をかけよう。容器のフタを開けると、独特の香りが漂う。好きなんだよなあ、これ。うなぎの上に十分に振りかける。いただきます。まずは肝吸いを一口。朝食を食べていないからか、上品な味が胃にしみる。次はうなぎだ。キラキラと輝く身に箸がスッと入る。おお、なんて柔らかさだ。口に入れると、ほどよく脂ののったうなぎが溶けるようにほぐれていく。甘くないタレを吸ったご飯と漬物との相性が抜群なのだ。
美味い!
やっぱり浜松に来たらうなぎなのだ。食べずして去ることは許されぬのだ。食うべし、食うべし。あっという間に半分食べてしまった。折り返し地点だ。お茶を飲んで落ち着こう。よし、ハーフタイムが終わった。後半戦だ。急がないと新幹線に間に合わないぞ。
美味い美味い。うなぎ、漬物、お吸い物のループを回すのだ。焦りは禁物だ。きちんとハシでうなぎをホールドしないとこぼしてしまうぞ。粗相はファールだ。うむ、完食。間に合った。
ごちそうさま
あや?
朝飯を食べていないからか、うなぎで胃腸も活動しだしたのか。トイレに行きたくなった。想定外の動きだ。ロスタイムは何分だ?おお、温水洗浄便座だ。昨晩の超絶激辛担々麺のせいで尻が痛い!
用を足してから荷物を取り、レジで会計をする。多くのサインが飾ってある。
よし、これで駅まで行って、切符を買えば試合終了だ。間に合った!勝ったぞ、日本代表バンザイ!
これだからニワカは…すぐ周りに感化されるんだよ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)