ラーメン

青森県八戸市 本八戸駅前 麺食堂 代々

丘珠空港

札幌には空港が二つある。ほとんどの便は新千歳空港を発着するが、一部の便は札幌駅からタクシーで二十分ほどに位置する丘珠空港から発着する。とてもアクセスがいいのだが、小さな空港で滑走路も短いので、プロペラ機しか飛ぶことができない。乗客数も最大三十人だ。バスよりも小さい。ゲートから飛行機までは徒歩で移動する。

空港には自衛隊のヘリ部隊もいるようで、ひっきりなしにヘリの発着訓練をしていた。

滑走路から離陸する。加速はジェット機よりもすごい気がする。ふわっと浮き上がると、すぐに旋回。機体がやたらと揺れる。眼下に札幌市内がよく見える。飛行機は風に煽られながら上昇し、高度4900メートルで時速390キロメートルの巡航速度に達した。これがジェット機ならば、高度11000メートルで巡航速度780キロメートルになる。

プロペラ機はそれほど高い空を飛ぶことができないので、ジェット機よりも景色がいいのが特徴だ。機体が小さいので風に煽られよく揺れる。最近読み始めた「マリア・マンテガッツァの冒険」は、飛行機がまだ複葉機で、操縦席がむき出しの時代の女性パイロットの話だが、現代の与圧されて空調の効いた機体でも、雲の中に突っ込むのは不安なのに、当時のパイロットはどんな気持ちで機体を操縦していたのだろうかと、ついつい思いを馳せてしまう。それに、トイレはどうしていたのだろうか。

などと窓の外の景色を見ながら考えていたら、妻からメッセージが入った。

「今日、妊婦健診だけど、経管長が短いから、入院って。」

なに?!入院?!

つけ麺 代々

空港からのバスに乗ったのは二人だったが、一人は三沢市役所で降りた。本八戸駅まで乗っていたのは私一人だった。バスを降りて、駅前のルートインにチェックインする。まだ13時過ぎ、部屋には入れない。荷物を預けて、駅前を歩く。ホテルの裏にラーメン店が一件、駅ナカに蕎麦屋が一件。ホテルと反対側の駅前にはビジネス旅館が見える。少し駅から歩いてみたが、飲食店は見当たらない。

ホテルの裏のラーメン店が気になる。私の感が告げている、あの店は当たりだ。ホテルからも近い。うん、ここにしよう、ここに決めた。

店に入ると壁にメニューが貼ってある。

さて、なにを食べようか。

ラーメンが食べたいが、この店が力を入れているのはつけ麺か。焼きそばもある。うーむ。気持ちが固まらないまま、食券機と相対する。私はこいつが嫌いだ。人に決断を迫る冷たい無機質さに追い詰められるようで、正しい判断ができなくなる。勢いで選ぶしかない。ここは人気ナンバー3のトッピング全部のせ、代々スペシャルにする。

カウンターに通されると、つけ麺の食べ方が目に入った。私はいつも、食べ終えてからこの手の指南を見つけることが多い。今日は過ちを繰り返さない。よく読んで、美味しくいただくのだ。

店内はカウンターにテーブル、お座敷。十三時半と言うのに、席は半分が埋まっていた。やはりつけ麺を食べてる人が多い。

私のつけ麺が運ばれてきた。おお、見た目にはなかなかだ。つけ麺なら太麺でしょう。これは期待できそうだ。まずは一本の麺を箸で持ち上げ、なにもつけずにすする。コシのある力強い麺だ。香りも喉越しもいい。

続いて麺をガツっと箸で取り、つけ汁に浸す。食べ方に書いてあるように、刻んだ野菜と食べるので麺と合わせやすい。まるでタンメン、いや、中華料理店の野菜炒めと麺を食べてるかのようだ。

つけ汁は思ったよりも具だくさん。普通のつけ麺のように食べていると、具がのこる。まるでミートソース。もやしのシャキシャキ感がいい。チャーシューは薄めだがしっかりと歯ごたえと弾力がありながら固くない。味は見た目ほどタレに頼らず、肉の味がしっかりとする。

美味い。

スープは醤油ベースのなんだろうか。注文時に店員が
「唐辛子と七味と酢が入りますが大丈夫ですか?」
と尋ねてきた。確かに少々ピリ辛だが、煮干しラーメンに風味が似ている気もする。もっと七味と酢を入れたい気もするが、それではサンラータンになってしまう。このまま食うべし。

麺をつけ汁に入れ、躊躇なくたっぷりの具と麺をつかみ、豪快に口に入れる。そして、チャーシュー、めんま、味玉。中身は完全な半熟黄身、白身はさほど味が付いていない。つけ汁の味を邪魔するものは、このどんぶりの中に存在しない。そう、これはエコシステム。味の循環閉鎖系に他ならないのだ。

麺と具を食べ終わったら、背中の電子レンジで加熱だな。段取りに抜かりはないはずだ。さあ、麺も具もなくなった。電子レンジで熱々のスープ割りとやらをと思い、つけ汁にスープを投入。思いの外、熱い。レンジで温める必要なし。飲み干すまではいたらなかったが、大半を美味しくいただく。

腹一杯だ。

カウンターに座る落ち着きのない客には、つけ麺の上に全部のせトッピングされたような料理が運ばれてきた。もしや、これが焼きそばか?!太麺を炒めたなかなかに豪快な…違う、醤油ラーメンだ。

夜、地元の知り合いに聞いたところ、この店は八戸で一番美味くて流行っている店だ。並ばずに食べれたのはラッキーだよ、とのことであった。そして知り合いがハマっているのは、この店の焼きそばだったのだ。

次回は焼きそばだ。

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