岐阜駅前で晩飯に悩む
今晩は何も予定がない。誰とも会わない。昨晩の静岡でいきなりやられた感がある。懇親会の後はよほど理由がなければ、二次会までは付き合うことにしている。だが、誰かと飲むとどうしてもピッチが上がってしまい、飲みすぎる。二日酔いとまではいかなくても、体調なイマイチなことは少なくない。
こんな生活、体に悪いことは分かっているのだが、付き合いもあるのでやむを得ないのだ。
だが、今晩は一人だ。自由だ。フリーダム万歳。とは言え、ひとり飯だと意外に店を探すのに苦労する。まず、何を食べるか。一人焼肉は平気なのだが、今日はそんな気分ではない。岐阜は何度も来てるが、川魚と飛騨牛がツートップである。今の体調にはそぐわない。
岐阜市内には名鉄岐阜とJR岐阜の二つの駅がある。名鉄岐阜駅の方が繁華街にある。JR岐阜駅は少し外れにあるような感じだ。なんせ、駅の向かい側がソープ街になってるくらいだ。店も少ない。調べると、元々は岐阜駅を中心に開発されていたようだが、産業構造の変化等により寂れていったようである。
最近になって北口駅前の再開発が行われたが、綺麗なのは駅の周りだけで、数分も歩けば昭和の雰囲気が残る寂れた街並みと、再開発された味気ない街が入り混じっているのが見て取れる。両極端すぎて、どちらにも食指が動かない。
羽前そば 極み
仕方なく、繊維問屋の向こう側まで歩いてみた。こんなところに蕎麦屋がある。こだわりの二八蕎麦、石臼挽きの山形蕎麦。これは美味そうだ。私は十割よりも二八が好みなのだ。よし、こんばんはここで夕餉(ゆうげ)にしよう。
静かな店内は落ち着いた内装と相まって心休まる。奥の方に団体客がいるようだ。笑い声が聞こえる。
お品書き
さて、何を食べようか。これがお品書きか。
旬のメニューがこれだ。
春のお品書き。板そばは当然、締めに食べる。
一杯目はビールだ。それもハートランド。後味がひかない。爽やか。店内で陶器を展示販売している。
お通し
玉コンは味が染み込んだ食感のいいこんにゃくだ。からしをつけすぎたか、詰まった鼻に作用する。少し息ができそうになってきた。風邪をひくとなかなか治らない。先ほど、小池一夫が死んだと報道されていた。ああ、クライングフリーマン、ダミーオスカー、オークションハウス、マッド☆ブルなどなど…懐かしい。八十二歳だと。そうだわな、そんなもんだよな。私も後、三十年しか生きられないのだな。
店内はジャズが流れる。今度は多めにからしをつけて食べてみる。味の染み込んだ玉コンはビールによく会う。うっ?!これは効く。からしが鼻をツーンと責める…が、先ほどのように鼻が通ったりはしなかった。残念だ。むしろ喉が刺激されて咳が止まらない。私は喉が弱い上に、このところの風邪で咳止めのアスベリンを飲んでる始末だ。
ああ、きつかった。辛子舐めんなよ、この野郎。
この店にはハイボールがない。日本酒は充実している。これは飲むしかないではないか。酒でエネルギー充填120%にして波動砲を撃ちまくりはしないが、ほんの200メートル先は金華園だ。駅前にソープ街というとんでもない街だ。
見た目はでれんとした厚揚げに青ネギか?食べてみると、出汁のしみたふんわりとした厚揚げは、焼きとは違う味わいだ。山形式なのか。青ネギに見えたのは茎わかめ。シャキシャキでうまい。先日も島原で食べたが、改めて茎わかめのうまさを実感した。
天ぷらスティック ごぼう
天ぷらスティック。ふむ、それを食べてみようじゃないか。
ここで「くどき上手」をいただく。フワッとした純米酒だ。私は辛口を好まぬ。それなら焼酎を飲めば良い。日本酒度がそこそこの純米が美味いのだ。出汁のしみたふんわり厚揚げにほんわか純米酒。不味いわけがない。茎わかめは自己主張のない、控えめな味わいだ。食感だけは存在感がある。体に良さそうだ。
天ぷらスティックが予想外のボリュームだ。この店はどうも私の予想の斜め上をいく。塩につけてぽりぽり食べる。ゴボウがふんわり。酒に合う。これは癖になりそうだ。
トイレは洋式便座。温水洗浄機能はなかった。
そしてついにフィニッシュ。腹が減った。脳内慎重審議の結果、板そば大盛りだ。
「太麺と細麺、相盛り、どれにしましょう。」
想定外の質問が返ってきた。改めてメニューを見返せば、たしかにそのような記述がある。揚げそばが細麺だという。ああ、あの山形のぶっとい蕎麦か。だが、たまには相盛りといってみようではないか。
板そば相盛り
そばつゆはからすぎず甘すぎず、深みのある味わいでそばにたっぷりとつけてもしょっぱくない、蕎麦の味も邪魔しない。太麺は食べてすぐに思い出した。沼田の蕎麦だ。ツルツルとした喉越しで、しっかりと二八特有のコシがある。細麺も悪くない、というか美味い。
岐阜や地でこのような蕎麦と出会えるとは、まさに楽市楽座。やるな織田信長。
天ぷらスティック ブナシメジ
酒も残っていることだし、もう少し何か食べたい。再び天ぷらスティック。なるほど、大き目のブナシメジを一本ずつ揚げるわけだ。熱々の天ぷらが蕎麦にもよく合う。これで天せいろ気分なのだ。
ごちそうさま
蕎麦湯がうまい。胃にしみる。ホッとする。ああ、満足だ。一人ゆっくりと蕎麦を嗜みながら酒を飲む。そんな歳になってしまった。
さて、明日に備えて、ホテルでゆっくり休むとしよう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)