青森魚菜センター本店
初めて青森駅に降り立ったのは六年前の初夏だ。そこで出会った衝撃の味覚が「のっけ丼」だ。ご飯を買い、市場に売っている好みの刺身を買ってご飯に載せる。オリジナルの海鮮丼を食べることができるのだ。このシステムをパクった、もとい、採用した市場は全国にいくつかある。二年前に訪れた釧路の和商市場もそうだ。下関の市場も似たようなシステムと記憶している。自分の好きなものを、好きなだけのっけて食べる丼。なんて贅沢なのだろうか。
昨晩は焼肉の後に軽く飲んで、サクッと帰った。今日はこれから新幹線で仙台まで行き、仙台空港から那覇行きの便に乗るのだ。朝八時半の新幹線に乗るためには、七時過ぎに食事を始めなければならない。ホテルから徒歩数分の青森魚菜センターに向かうと、すでに店は開いていた。
のっけ丼システム
ここのルールはいたって簡単だ。
食事券を購入
まずはのっけ丼のお食事券を受付で購入する。十枚千三百円、五枚で六五〇円だ。とりあえず十枚買う。
村上商店でご飯を買う
これが基礎となる。基盤となる。ご飯がなければ刺身を載せられない。普通盛りと大盛りがある。お好みで選ぶのだ。私は普通盛りにする。ここではしじみ汁を買うこともできるが、別の店では普通の味噌汁も売っている。焦りは禁物だ。味噌汁と漬物は仕上げに買うのだ。
まだ準備ができてなかったらしく、ご飯の交換券を渡される。「チッケト」の誤植も微笑ましい。
呼び出された。ご飯ができたようだ。
市場で好きなネタを購入
ご飯をゲットしたら、さあ、好きなだけ刺身をのせるがいい。場内をウロウロする。マグロがいいな、ホタテもいいな、頭の中で、いいことしてる。
違う。妄想ではない。ヤッテマレ!買ってまえ!
そんなことをしているうちにチケットが尽きてしまった。追加で五枚購入だ。朝から1950円の飯だ。なんて贅沢なんだ。
最後は味噌汁と漬物でフィニッシュ
必須ではないが、やはり味噌汁と漬物は食べたいところである。
のっけ丼
これを持って、市場内の食事席に陣取る。平日の早朝なので人が少ない。
さて、何から食べようか。まずはホタテにかぶりつく。ああ、甘くてねっとりしてうまい。私は内地ではホタテを食べないが、青森と北海道だけは別だ。なぜだかホタテが別物なのだ。
白と黄色のコントラストが美しいヤリイカの卵は珍味系の味だ。好きだな。酒にも合いそうだ。そういえば、こないだ自宅でさばいたヤリイカの胴から卵らしきものがたくさん出てきて、これ食えるのかなあと思っだのだが、食えるのだな。考えてみれば、食えない魚卵って聞いたことがない。売ってないだけで、タイやサンマ、アジ、イワシの魚卵や白子だって、下ごしらえして食べれば美味しい。タコの卵は北海道では珍味だ。(食べたことないけど…)
ウニは見た目は悪いが甘くてうまい。臭みなどない。わさびの刺激とウニの香りが絡み合って一体となり鼻を突き抜ける。たまらん。ホタテの貝ひもはヌルヌルして好きではないのだが、なんだこれは?コリコリして、ぬめりもなく、味は淡白なのに香りだけが鼻に抜ける。うーむ。
こちらでは旬のシャコも甘くていい。かつては瀬戸内海で大量にとれたのだが、現在は激減。岡山でもこの地のシャコを使っていると聞いた。二十年前に中国の北載河で食べたシャコが美味かった。きっと今は獲りすぎて、瀬戸内海と同じようにいなくなってしまっているだろう。
中国人は渤海の魚を獲り尽くしてしまったから、尖閣や朝鮮半島あたりまで来ないと、漁民は死活問題なのだ。領海とか排他的経済水域など、彼らにとって関係ない。無視だ。日本の警察(海上保安庁)は韓国やロシアみたいに銃撃してこない。せいぜい放水してくるくらいだから安全だ。見つかっても、逃げ切れば日本の船は追いかけてこない。あとは中国政府が日本政府に開き直って逆ギレすればおしまいだ。彼らにとって日本の海は天国なのだ。我が物顔なのだ。
マグロのすき身はねっとりとして甘い。スーパーでよく売っている、赤身を叩いて油脂を足したパチモンとは別物だ。中とろは程よい脂のノリで、やはり甘い。マグロの本場、青森だ。
ここでご飯がなくなった。あとは刺身なのだ。浅漬けがまた美味いのだ。ここのお母さん手製なのだ。味噌汁はおふくろの味、具沢山なのだ。隣の団体客がのっけ丼を食いながら、うまいを連発している。だよね。マジうまい。
食べ終わった。朝から幸せだ。さて、沖縄に帰ろう。
元祖 のっけどん
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)